(あんな姉さん、見たことない) 激しく咳き込む真紀の姿は、聡史を満足させた。
覗きは珍しくないの。
さっきの事だろうか。
健一は、鏡子のすべてが知りたかった。
ふと、人の気配を感じた。
「……痛い。
「なにをするのっ」 下着を取り戻そうとする鏡子から、 飛び退くように椅子から立ち上がると、健一は奪った下着を広げた。 「オバンのくせに、シャレたパンティーはいてるじゃねえか」 上品な刺繍で縁取られた白いショーツを、目の前にかざした。
その美貌故、ファンも多く見学者という名の覗きは後を絶たず、 異例な事だが男子は体操部の練習は見てはいけないという決まりが出来た。
排泄のあとが真っ白なティッシュにこびり付いていた。
自らの命を絶つ決心をするまでに、どれほど辛い目に遭わされたのか。
ムカツク……。
観念にも似た諦めの気持ちでいると、片瀬は口を開いた。
真面目なんだから」この人は少し、小悪魔的な所がある様だ。
告発し、罪の償いをさせたかった。
新聞の紙面に載ることの無い、悲惨なレイプ事件を数多く知っていた。
落書きだらけの、ほとんど真っ白なノート。
思ったよりもやれそうだ。
片瀬は俺に背を向け、しゃがみ込んだ。
それを思うと、真紀は思わず目が潤んでしまった。
が、お構いなしに彼女は距離を縮めて言った。
「何をしてるの?そんなところで倒れて」抑揚のない、落ち着いた声、怒気は感じられない事務的な声。
途中、片瀬は今日も色々と話してくれた。
周りの友達からは 「やめとけ、お前じゃ無理だ」 「あの子レベル高いぞ?釣り合ってねーよ」 「あいつはライバル多いぜ?バスケ部のエースも惚れてるらしい」 「つか、うちの学校で一番人気じゃね?」 などなど、今にして思えば彼らの中にも彼女に惚れている奴がいたかもしれない。
(あれ、 、) 姉は一人ではなかった。