『あぁっ! お兄ちゃん!』 切なげに叫ぶまさみちゃん。
(待ってて、って…) 放課後、蒼組の生徒達は一斉に帰宅してしまう。
「どうかそうむずかしくお考えにならないでください、Kさん」と、彼女は言い、泣き声になって、もちろん握手などは忘れていた。
そして読者までをも幸せにする。
最初のうちこそ噂になったものの、普段一緒にいる事のない楓香たちの事に、いつまでも興味を持つ者もいなかった。
「………」 唇を離し、楓香が目を開けると、謙介は楓香の肩を掴んでゆっくりと押した。
(もう……) やり場の無い喪失感をぶつけるところもなく、楓香はただ走った。
つまらぬ考えでぼんやりしてないで、落着いているがいいぜ。
「「マコ!!」」 「煩いっ!お前ら、もっと静かに入って来れねえのか!」 「うわっ、ごめん!じいちゃんっ、先にマコ抱かせて!」 飛び込んできた兄達に、真介が怒鳴りつける。
もっとも、ぺったんこのまさみちゃんの胸なので、ただ張り付いているような感じだが、乳首が透けて見えることで、妖艶な感じになっている。
その後のことはあまり思い出したくないが、まさみちゃんは男だし! と、説明をした途端、ビンタと言うよりは掌底での打撃という感じのビンタを食らい、足に来てしまった……。
口の中で、舌と唇を使って皮を剥くと、柔ら固い感触がした。
」 きょとん、とした顔をして。 悟空は、倦廉の顔を覗き込んだ。 「呼んでみただけだ」 悪戯っぽく、倦廉が言うと。 悟空は拗ねたように、頬を膨らませた。 お前の真似をしただけだ、と言うと。 益々、頬を膨らませてしまう。 その様相が、なんとも可愛いもので。 「ケン兄ちゃん、イジワル! 声を出そうとした時、唇が塞がれている事に気付く。
ただ、謙介と付き合っている事になってる手前、誰かに見られてもし謙介に余計な事を言われたりするのが困る。
私の部屋の明りをつけますから、それまでここでお待ちになってちょうだい。
(会いたいな…) 何の感情も感じられない、謙介のメールの1行を、楓香はドキドキしながらずっと見ていた。
「私の片想いなのかも知れない」 思わず本音を楓香は口に出した。
この部屋には、Kもよく知っているとおり、少し前からタイピストのビュルストナー嬢が住んでいるが、彼女は非常に早く仕事に出てゆくのがならわしであり、帰りも遅いので、Kとは 挨拶 ( あいさつ )以上にたいして言葉を交わしたこともなかった。