蟬のなくをききて 類從本には「寒蟬啼」とあり。
(一九) 松の葉のしろきを見れば春日山 木 ( こ )の芽もはるの雪ぞ降りける 眞淵は、「木の芽もはるの句此公の心に似ず、はじめの歌ならむ」と評せり。
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庭 萩 類從本には「庭のはぎをよめる」とあり。
【他出】友則集、新撰和歌、古今和歌六帖、綺語抄、定家八代抄 【主な派生歌】 寝ても見ゆゐても見えけり桜花はかなの春の夢の枕や 寝ても夢ねぬにも夢の心ちしてうつつなる世を見るぞかなしき [続後撰] 夢路にはたれ植ゑおきて桜花ねても見ゆらむ春の夜すがら の、父の侍りけむ時によめりけむ歌どもと乞ひければ、かきておくりける奥によみてかけりける ことならば言の葉さへも消えななむ見れば涙のたぎまさりけり (古今854) 【通釈】どうせなら、父の遺したこの詠草も一緒に消えてほしい。
然而神世七代、時質人淳、情欲無 レ分。
田家秋夕 類從本には「田家夕」とあり。
大伴黑主はそのさまいやし。
「しら」に「知ら」(「知る」の未然形で、否定の辞が続くことを予想させる)を掛け、どこに浅瀬があるか分からずに、の意を兼ねる。
【補記】花の散る理由を探る知的な心がはたらいているところ、当時の歌の特色を具えているが、理よりも明らかに情がまさった歌で、古今集の歌としては珍しいほど抒情的な詠みぶりの歌である。
眞淵は「はらへただ、このいひなし後なり。
五 月 雨 (一六四) 五月雨は心あらなむ雲間より出でくる月を待てばくるし き ( イも ) 類從本・ 定家所傳本には結句「くるし も」とあり。
梅の花さける所 類從本には、「梅の花さける處をよめる」とあり。
「うすく」を導く。
遠 山 櫻 類從本には「遠き山の櫻」とあり。
心は蛍に劣らず燃えているのに、光を発するわけではないので、人にはこの思いが伝わらない。
(三五四) 夜をさむみ浦の松風吹き すさび ( イむすび )むしあけの浪に千鳥鳴くなり 類從本には第三句「吹き むすび」 定家所傳本には「吹き むせび」とあり。
【補記】恋人と逢えない苦しみを詠む。